物流管理に悩む企業にとって、効率的な在庫・保管システムは業務効率化の鍵となります。農業分野でAIを活用したサービスを提供するグリーン株式会社は、センサー機器などの個品管理という課題をサマリーポケットの導入で解決しました。
今回は同社の取締役CAO・兵後光香さんに、事業内容から荷物保管サービス・サマリーポケットの活用例を伺いました。
サマリーポケットで
ハードウェアの在庫保管・発送管理
— 事業内容について教えてください
農業用AIサービス「e-kakashi(イーカカシ)」を提供しています。これは、AIがデータを分析して、いつどんな作業を行ったらいいのかという判断を支援するサービスです。構成はハードウェアとクラウドになっていて、クラウドの部分がAIの頭脳、ハードウェアは田んぼや畑などの圃場(ほじょう)に設置するセンサー類で、環境データを収集します。これに気象データを掛け合わせ、植物科学に基づいて作ったAIが分析します。
例えば「何月何日に収穫適期になるか」とか「1週間先の土壌水分量がこのぐらいになります」といった予測やアドバイスを提供しています。また、電子マニュアルが簡単に作れる機能も備えており、産地特有の栽培方法やベテラン農家の栽培スキルを電子化して共有することで、産地全体の収穫量や品質の維持・向上に役立てていただいています。

サービスサイト:https://www.e-kakashi.com/
— ハードウェアとソフトウェアの管理について教えてください
大きな構成として、通信をするゲートウェイと呼ばれる部分と、各種センサーに分かれます。ゲートウェイは提携している企業が製造し、メーカーから直接お客様に納品しています。
センサーについては、ゲートウェイに接続するための特殊なコネクターが必要なため、センサーメーカーに依頼して製造してもらい、当社が買い上げています。これらを在庫として現在は「サマリーポケット」で保管・管理しています。
— サマリーポケットを利用する前はどのように管理されていましたか?
以前は別の倉庫会社で保管しており、大型機器や出入庫が少ないモノや大口の法人取引の場合は、現在もそちらを使用しています。そちらの倉庫会社はパレット管理が得意で、個品単位の管理が難しく、同じモノでも状態が異なるモノを正確に把握するのが困難でした。
最近は農業市場の成熟もあり、大規模農業法人や個人農家からの少量注文が増えてきたこともあり、よりきめ細かい出入庫管理のため、預けたモノ1個ずつ撮影しリストで管理ができるサマリーポケットのスタンダードプランを契約しました。

預けたモノを写真で一覧で管理できるサマリーポケットのスタンダードプラン
— サマリーポケットを知ったきっかけは?
実は社員が個人的に使っていて、非常に使い勝手がいいという話を聞いたのが最初のきっかけでした。その後、webで調べてお問い合わせしたところ、担当者に丁寧に対応していただけました。すでに社内で使用経験があったことで導入へのハードルが下がり、意思決定もスムーズに進みました。
— サマリーポケットを選んだ決め手は何ですか?
サマリーポケットの担当者の丁寧な対応も大きかったですが、個品管理ができることと明朗会計が決め手になりました。特に全ての部品が写真で確認できるのは非常に大きなメリットでした。
実は新品の商品在庫の他に、プロジェクトやテスト利用のためにデモ機として一度使ったモノがあり、手元にある在庫の状態を1個1個確認したいと考えていたので、写真で確認できるのは非常に助かります。
※31点以上のアイテム撮影をご希望の場合は、別途料金が発生します。

スタンダードプランで預けると1点1点スタッフが撮影してリスト化
また、1回あたりの発送料金が明確なのも良いですね。以前の倉庫では、複数の箱から取り出す時のピックアップ料金や梱包料、配送費などの事前確認が困難な部分があり、月間の費用予測が立てにくかったという悩みもありました。サマリーポケットは専用ボックスのサイズと個数だけで簡単に費用がわかるので事業計画が立てやすく、明朗会計である点が大きなメリットだと感じています。
— 写真撮影での管理はどのようなメリットがありますか?
お客様の元にお届けする前の商品の状態管理が非常にやりやすくなり、特にデモ用センサー類の返品管理がしっかりできるようになりました。センサー自体は再利用できるモノなので、コスト面でもエコな観点でも良い効果が出ています。
法人利用を前提とした保管センターの詳細を説明いただき、撮影方法や梱包のルールも確認できたので、社内での決裁にも役立ちました。以前の倉庫では年度末に棚卸しのために直接訪問していましたが、今は写真で間違いなく管理・確認できるので、その工数も削減できています。

24時間365日管理された空調と堅牢なセキュリティの保管センター
使い勝手は非常に気に入っているので、今後物量が増えてきた時に、CSV形式で在庫データをダウンロードできるようになれば、さらに便利でありがたいですね。
農業の未来を変える
「e-kakashi AIブレーン」
— センサーで集めたデータはどのように活用されているのでしょうか
センサーの種類は土壌だけでなく、温湿度センサー、日射量センサーなどがあります。AIは植物科学に基づいて設計されているので、導入した日から科学的根拠に基づいた予測機能をお使いいただけます。農業の分野では、各地方自治体や研究所、大学の農学部などですでに多くの研究が進んでいます。例えば「桜前線」も植物科学的に分析した結果を使っていて、2月の最高気温から毎日の最高気温を積算して、何度になったら花が咲くかということが分かっています。この植物科学の知見に天気予報を掛け合わせると、いつ頃花が咲くか予測できるのです。
同じように、お米や野菜、トマト、いちごなどでも研究が進んでいて、そのデータをあらかじめAIに取り込んでいますし、追加も簡単にできるようになっています。そのため、センサーを設置したその日から科学的根拠に基づいた予測が可能になります。もちろん、農家さん個人や産地ならではの特別な栽培方法にも対応できるよう、細かく調整する機能も用意しています。ただ、まずは基本的には植物にとって最適な環境条件は研究によってすでに分かっている部分も多いので、品種ごとの基本的なしきい値を活用したり、種苗メーカーがもつ目標値を基準にすることをお薦めしています。
— 通知はどのように届くのでしょうか
スマートフォンのアプリで受け取ることができます。もちろんパソコンでも閲覧可能です。農家さんはどこからでも、現在の状況を確認できます。例えばビニールハウスの温度が急激に上がった場合など、危険を知らせるアラートを受けて、ハウスに駆けつけて窓を開けるといった使い方もされています。ハウスにつきっきりにならなくても良いので、作業負荷が下がったとの嬉しい言葉もいただいています。
また、収穫に適した日を前もって知ることができるので、資材や人材の手配が早めにできますし、効率化も可能です。効率化と収穫量の向上があいまって、増収につなげることができた事例も多くあります。
— 主なお客様はどのような方々ですか?
圧倒的に多いのは地方自治体、JA、そして食品メーカーです。食品メーカーは原料調達のために契約農家を多く持っていて、その契約農家に「e-kakashi」を設置してもらっているケースが多いです。
公表している事例では、カルビーポテトさんが試験導入してくださっています。気象変動の影響で干ばつになる年において、ジャガイモの収量が減少 する場合があるという悩みがありました。そこで干ばつなどの環境下でも安定的な調達を行うため、データを活用して最適なタイミングで水やりを行うという実証実験に取り組みました。水やりを最適化したところ最大で収穫量1.6倍にするという結果を出しておられます。
— グリーン社が今後目指すものについて教えてください
私どもの強みは植物科学です。コーポレートメッセージとしては「自然の声を聴くテクノロジー」として展開しています。環境をデータ化し、「植物が環境ストレスを感じているかどうか」を見える化することが得意です。
現在は農業向けサービスが中心ですが、研究開発では二酸化炭素の吸収量を見える化する技術も特許を取得しています。環境データから光合成速度を推定し、独自の計算式を使って年間の二酸化炭素吸収量の想定値を導きだす取り組みを行っています。最近は緑化活動に取り組む団体様からの引き合いが増えてきています。
農業は経験と勘が活かされる業界ですが、高齢化で世代交代が進む中、その貴重な情報資産が失われつつあります。例えばお米農家さんの経験は年に1回の収穫でしか積み重ねられません。60歳のベテランでも40回ほどの経験しかないのです。その中で気候変動が進む中、今までの経験が活かせなくなっている実感もあると思います。平均年齢69歳という状況で、このまま5年経てば75歳になるわけです。私たちはその情報資産をテクノロジーの力で継承し、地域や生産法人のお役に立ちたいと考えています。
在庫管理ならサマリーポケット
個品管理、返品処理、状態確認など、物流管理の悩みは多くの企業が直面する課題です。グリーン株式会社の事例では、明朗会計と写真による正確な在庫管理というサマリーポケットの特長が、業務効率化に大きく貢献しています。少量多品種の商品管理や返品処理にお悩みの企業様、サマリーポケットの活用をご検討ください。
記事更新 2025年4月